講師よもやま話
風力発電所は簡単には発電できません。(2)

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松下正晴(まつした まさはる)
定期講習講師(知識、事故例、法令)

前回は風力発電機が風を受けてから発電・停止するまでの、監視装置の働きを中心に述べましたが、今回は風車のメインとなるブレード(羽根)のメンテナンスを紹介します。

風車のブレードは、定格回転時に先端部分で時速290㎞のスピードで回転しているため、空気中の微粒子や雨との衝突によりブレード表面の塗装部分が剥がれる等の損傷が発生します。また、落雷によるブレード本体の損傷が発生することもあります。

ブレード表面のメンテナンスは、専門業者がロープに「ローププーリー」を取り付け、バックアップのロープとワイヤーで高さ80mのナセル上部からぶら下がり、損傷個所のチェック及び補修を行います。因みに、私はナセルのハッチから顔を出すのが精一杯です。クレーンを使う方法もありますが、80mまで到達する車両の手配が難しく、また、バケット本体でブレードを傷付けるおそれがあるため、ブレード全体のメンテナンスでは使用していません。

落雷に関しては、ブレードへの落雷が重大な損傷になることもあるため、雷エネルギーをスムーズに対地に放電する部材をブレードの先端やブレード内部に取り付けています。ブレード先端には、着雷時の耐雷性能のため、強化アルミチップの「レセプタ」を取り付けています。レセプタにブレード内で接続された電線「ダウンコンダクタ」がブレード根本の「ライトニングコンダクタ」に接続され、可動部からタワー本体のアース回路に放電する「インシュレーションブッシュ」を通じタワー本体を経由して対地に放電するようになっています。

ブレードやタワー本体に落雷した場合、タワーの基礎部分に取付られた直撃雷検出装置から風車停止信号が出て風車を停止させます。レセプタの損傷や、ダウンコンダクタ及びインシュレーションブッシュの劣化をチェックし補修又は交換を行って、ブレードや監視装置に異常がないか確認し、風車を再始動します。

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