1.電気工事士とは?
電気工事法は、電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とし、一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物及び500kW未満の需要設備である自家用電気工作物の電気工事について、その種類ごとに資格(第一種電気工事士、第二種電気工事士、特種電気工事資格者及び認定電気工事従事者)を定め、その資格がないと作業に従事してはならないとしています。ただし、軽微な工事は除かれます。
1.1.仕事内容
第二種電気工事士は、一般家屋や商店等の小規模施設の低圧で受電する電気設備である一般用電気工作物及び小規模事業用電気工作物(出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備及び出力20kW未満の風力発電設備)の工事に従事できます。
第一種電気工事士は、第二種電気工事士が従事できる電気工事に加え、自家用電気工作物である高圧で受電するビルや工場の最大電力500kW未満の需要設備に係る電気工事に従事することができる資格です。ただし、ネオン工事と非常用予備発電装置工事が対象となる特殊電気工事には、第一種、第二種とも電気工事士の資格だけでは従事することはできません。
1.2.第一種電気工事士と第二種電気工事士の違い(概略)
種 類 | 第一種電気工事士 | 第二種電気工事士 |
工事可能な範囲 | 一般用電気工作物(600V以下)+
小規模事業用電気工作物+自家用電気工作物(500kW未満の需要設備) |
一般用電気工作物(600V以下)+ |
免状の取得 | 試験合格+3年以上の実務経験が必要 | 試験合格又は養成施設での課程修了 |
定期講習受講の義務 | 5年以内 | 不要 |
2.第一種と第二種でどちらの資格を取るべき?
2.1.第一種と第二種でどちらの資格を取るべき?
経済産業省統計では2020年度の自家用電気工作物のうち、件数で高圧自家用電気工作物は約93%を占め、約85%が第一種電気工事士資格を必要とする500kW未満となっています。また、自家用電気工作物の設置件数は年々伸びる傾向にあります。電気工事の仕事を広くやりたいのであれば、第一種電気工事士資格が必要です。第一種電気工事士資格をもっていれば、知識と経験を有する者として評価され、電気工事士資格を必要としない電気工事分野でも活躍できるでしょう。
第一種電気工事士の資格者(試験合格を含む)は、産業保安監督部長の許可を受けて勤務する最大電力500kW未満の需要設備等の電気事業法に基づく電気主任技術者になることができます。
2.2.第二種電気工事士のメリット
第二種電気工事士は、一般家屋や商店等の小規模施設の低圧で受電する電気設備の工事を行いますが、家屋等の新築・改築は常に行われており、工事の需要は途切れることはありません。経験を積んで、1人ないし少人数で独立して事業を営んでいる人も多くいます。試験に合格すれば工事に従事できることから、他業種からの参入も容易です。
第二種電気工事士の資格者は、産業保安監督部長の許可を受けて勤務する最大電力100kW未満の需要設備等の電気事業法に基づく電気主任技術者になることができます。
WattMagazine-電気業界の就職支援サイトに電気工事士の資格とメリットに関する記事があります。
3.電気工事士試験の概要
電気工事士試験には学科試験と技能試験があります。工業高校等で所定の電気工学の課程を修めて卒業した者は第二種電気工事士試験の学科試験を免除するなどの免除措置があります。
学科試験では電気に関する基礎理論、電気工事の施工方法などの問題が出され、四肢択一方式で、マークシートによる筆記方式又はパソコンによるCBT方式により解答します。学科試験の合格基準点は、60点です。技能試験は学科試験合格後受験でき、配線器具、電線等が用意され、これらを問題の配線図どおりに持参工具を使って接続し、作品を完成させます。候補問題がいくつか事前に公表され、その中から出題されます。技能試験の合格基準は、作品に欠陥がないことです。技能試験が不合格でも、次の電気工事士試験に限り学科試験免除で技能試験を再度受験できます。
令和6年度は第一種電気工事士試験、第二種電気工事士試験とも、上期、下期に行われ、上期の第一種電気工事士試験の学科試験はCBT方式のみです。詳細は、試験を実施する一般財団法人電気技術者試験センターのHPを参照してください。
4.電気工事士の資格は取得しやすい!
電気工事士試験の合格率は、同じ電気保安関係の電気事業法に基づく電気主任技術者資格の試験に比べ高く(令和3年度及び4年度の第三種電気主任技術者試験の合格率は、約8%~約16%)、比較的取得し易い資格といえるでしょう。
4.1.誰でも受験できる
電気工事士試験の受験資格は特になく、国籍、年齢、学歴、職歴を問わず受験可能です。受験機会が令和6年度は上期、下期の2回設けられ、学科試験の筆記方式はそれぞれ1日での実施ですが、CBT方式は18日間あるいは39日間で選択できます。学科試験、技能試験とも、全都道府県の会場で実施されます。
4.2.比較的難易度が低い
第一種電気工事士試験及び第二種電気工事士試験の学科試験(2022年度まで筆記試験としていた)と技能試験の受験者数、合格者数及び合格率を2018年度から2022年度まで次に示します。
各年度学科試験の受験者のうち第一種電気工事士については40%~58%、第二種電気工事士については55%~66%が合格しました。技能試験が不合格でも、次回の試験で学科試験免除で技能試験を受けることができます。その結果、第一種電気工事士試験は63%~67%、第二種電気工事士試験は65%~73%が合格しました。学科試験の合格率に技能試験の合格率を乗じて電気工事士試験の合格率を計算すると、第一種電気工事士試験で25%~37%、第二種電気工事士試験で37%~45%の合格率です。第一種は第二種に比べ少し低くなっていますが、それでも高い合格率といえるでしょう。
5.電気工事士の資格は独学で取得できる?
電気工事士試験は独学で取得するのは可能です。ネット上のアプリや出版物など多くの学習素材が提供されています。効率的に勉強するには、通信講座等を利用するのもよいでしょう。過去問の勉強は大事です。どういう問題が出されているかよく調べましょう。技能試験対策については電気工作などの経験のない人には独学では難しいように思います。経験者に教わったり、講習会などで学ぶとよいでしょう。事前に公表される候補問題はすべて一通り製作し熟知しておく必要があります。これに必要な材料は市販されており、ネットで購入できます。工業高校電気科の生徒は在学中に第二種電気工事士資格はもちろん第一種電気工事士資格をとるよう勉強しています。負けずに頑張りましょう。
6.電気工事士の試験合格後は?
電気工事士免状は都道府県知事が発行しますが、第一種と第二種で手続が異なります。
6.1.第二種電気工事士
第二種電気工事士ついては、試験合格後、住所地を管轄する都道府県知事に免状の交付を申請することになりますが、事務を電気工事工業組合に委託している都道府県もあります。都道府県の申請窓口は一般財団法人電気技術者試験センターのHPを参照してください。
申請に当たっては、申請書(都道府県サイト等からダウンロード可能)に合格通知書、住民票等及び写真1枚を添えて窓口に申請します(手数料は5,300円)。手続が終了すると、プラスチックカードの免状が交付されます。
6.2.第一種電気工事士
第一種電気工事士免状の交付申請から交付までの流れは第二種電気工事士の場合と同じですが(手数料は6,000円)、申請書に実務経験証明書を添付しなければなりません。第一種電気工事士の資格取得には、試験合格に加え3年以上の実務経験が必要とされています。実務経験とは、電気に関する工事のうち、軽微な工事、特殊電気工事、電圧5万V以上で使用する架空電線路工事及び保安通信設備工事以外の工事の経験となっています。実務経験の証明者は、工事を行った会社・団体の代表者です。複数の会社・団体で実務経験がある場合は、それぞれの証明書が必要です。
第一種電気工事士免状のプラスチックカードは、裏面が第二種電気工事士と異なり、「講習受講記録」欄があります。義務づけられている5年ごとの講習の修了証(シール)をここに貼付します。
7.第一種電気工事士は定期講習受講が必要!
電気工事士法で、第一種電気工事士は経済産業省令で定めるやむを得ない事由がある場合を除き第一種電気工事士免状の交付を受けた日から5年以内に経済産業大臣の指定する者が行う自家用電気工作物の保安に関する講習を受けなければならない、当該講習を受けた日以降についても同様と規定されています。この講習を第一種電気工事士定期講習と呼んでいます。第一種電気工事士免状の交付を受けた日から定期講習を受講するタイミングを次に示します。
第一種電気工事士資免状に更新制度はなく、定期講習を受講しなくても免状は有効ですが、免状を有している限り受講義務があります。定期講習を受講しないと義務違反となり、都道府県知事は免状の返納を命ずることができます。電気工事に従事しないとして自主的に免状を返納することは可能です。
その際は、電気工事2法・都道府県担当課リスト から各都道府県担当課にお問い合わせください。
病気等のやむを得ない次の理由により、受講義務は免除されますが、その理由がなくなれば、速やかに講習を受講する必要があります。
・海外出張をしていたこと。
・疾病にかかり、又は負傷したこと。
・災害に遭つたこと。
・法令の規定により身体の自由を拘束されていたこと。
・社会の慣習上又は業務の遂行上やむを得ない緊急の用務が生じたこと。
・その他経済産業大臣がやむを得ないと認める事由があつたこと。
7.まとめ
一般住宅から産業分野にいたるまで、多種多様な電気設備(電気工作物)が存在し、発展しています。電気工事士は、このような電気設備をそれぞれの場所に設置し、使えるようにするための重要な役割を果たしています。社会の基盤を作り、支えているといっても過言ではありません。そのスタートは、第二種電気工事士の資格取得から始まります。経験を積んで第一種工事士になると、仕事の範囲は大きく広がります。電気工事士試験は難しい試験ではありません。しっかり準備をすれば合格できます。
第一種電気工事士は、5年ごとに定期講習を受け、最新の技術や法令の知識を学習しなければなりませんが、25年以上の実績がある電気工事技術講習センターがこれを提供しています。