1.電気工事士とは?
電気工事士の資格は、電気工事士法において定められています。この法律は、電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め、電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とし、電気工事とは一般用電気工作物、小規模事業用電気工作物又は自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備)を設置又は変更する工事(軽微な工事を除く)としています。また、電気工事士でなければ従事してはならない作業を定めています。
電気工事士には第一種電気工事士と第二種電気工事士があります。第二種電気工事士は、一般用電気工作物及び小規模事業用電気工作物の工事に従事できます。第一種電気工事士は、第二種電気工事士が従事できる電気工事に加え、最大電力500kW未満の需要設備に係る電気工事に従事できます。
2.電気工事士の試験は難しい?
電気工事士試験の難易度(合格率)は、電気事業法で定める電気保安関係の資格である電気主任技術者より低く(合格率は高い)なっています。また、電気工事士では、第一種の方が第二種より難易度が高く(合格率は低い)なっています。
2.1.電気主任技術者と比べ難易度は低い
電気工事士試験を実施している一般財団法人電気技術者試験センターの公表資料から算出した最近6年間の第一種電気工事士試験と第二種電気工事士試験の学科試験と技能試験の合格率を下表に示します。これらの数字は、同試験センターが実施する第三種電気主任技術者試験の同時期の合格率(科目合格を除く)が10%前後であることと比べると、大変高いものとなっています。これは、電気主任技術者は需要設備だけでなく、発電所、変電所及び送配電線の工事、維持及び運用の監督を行い、対象とする電気工作物の電圧も第三種電気主任技術者で5万V未満と高いことから、試験の範囲が電気工事士試験の範囲が広いためです。
2.2.第二種より第一種の方が難易度が高い
2.1.の表に示すように電気工事士試験では第一種より第二種の方が難易度が高い傾向にありますが、第一種電気工事士は高圧を扱うことから、第一種電気工事士試験では学科試験と技能試験で高圧の自家用電気工作物に関する問題が出題され、出題範囲が広くなるためです。
3.電気工事士試験の出題内容
電気工事士試験には学科試験と技能試験があります。免除される場合を除き学科試験に合格しないと、技能試験を受けられません。技能試験が不合格であっても、次回試験で学科試験免除で技能試験を受けることができます。
3.1.第一種電気工事士
第一種電気工事士試験の学科試験科目は、次のとおりです。
・電気に関する基礎理論
・配電理論及び配線設計
・電気応用
・電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備
・電気工事の施工方法
・自家用電気工作物の検査方法
・配線図
・発電施設、送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性
・一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安に関する法令
第一種電気工事士試験の技能試験は、次の事項の全部又は一部が行われます。
①電線の接続 ②配線工事 ③電気機器、蓄電池及び配線器具の設置 ④電気機器、蓄電池、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 ⑤コード及びキャブタイヤケーブルの取付け ⑥接地工事 ⑦電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定 ⑧自家用電気工作物の検査 ⑨自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理
3.2.第二種電気工事士
第二種電気工事士試験の学科試験科目は、次のとおりです。
・電気に関する基礎理論
・配電理論及び配線設計
・電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具
・電気工事の施工方法
・一般用電気工作物等の検査方法
・配線図
・一般用電気工作物等の保安に関する法令
第二種電気工事士試験の技能試験は、次の事項の全部又は一部が行われます。
①電線の接続 ②配線工事 ③電気機器及び配線器具の設置 ④電気機器、配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 ⑤コード及びキャブタイヤケーブルの取付け ⑥接地工事 ⑦電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定 ⑧一般用電気工作物等の検査 ⑨一般用電気工作物等の故障箇所の修理
4.電気工事士資格取得のメリット
電気工事士のうち第一種電気工事士は高齢化が進み、減少している傾向にあります。一方で、電気の利用拡大に伴いの電気工事士の需要は高くなっています。
4.1.就職・転職に有利になる
第一種電気工事士は自家用電気工作物の工事を行いますが、その設置件数は年々伸びる傾向にあります。電気工事の仕事を広くやるのであれば、第一種電気工事士資格が必要です。第一種電気工事士資格をもっていれば、知識と経験を有する者として評価され、電気工事士資格を必要としない電気工事分野でも活躍できるでしょう。
第二種電気工事士は、一般家屋や商店等の小規模施設の低圧で受電する電気設備や小規模事業用電気工作物の工事を行いますが、家屋等の新築・改築や太陽電池発電設備の工事は常に行われており、工事の需要は途切れることはありません。経験を積んで、1人ないし少人数で独立して事業を営んでいる人も多くいます。試験に合格すれば工事に従事できることから、他業種からの参入も容易です。
4.2.企業によっては資格手当がつく
電気の利用拡大は広がっており、電気工事士資格のニーズは高くなっています。企業によっては、資格手当がつきます。
WattMagazine-電気業界の就職支援サイトに電気工事士の資格とメリットに関する記事があります。
5.おすすめの勉強方法
電気工事士試験勉強は、ネットも含め多様なツールが利用可能です。これらをうまく使いこなして、合格につなげましょう。
5.1.学科試験
電気工事士試験は独学で取得するのは可能です。ネット上のアプリや出版物など多くの学習素材が提供されています。効率的に勉強するには、通信講座等を利用するのもよいでしょう。過去問の勉強は大事です。どういう問題が出されているかよく調べましょう。
5.2.技能試験
技能試験対策については電気工作などの経験のない人には独学では難しいように思います。経験者に教わったり、講習会などで学ぶとよいでしょう。事前に公表される候補問題はすべて一通り製作し熟知しておく必要があります。必要な工具や材料は市販されており、ネットで購入できます。
6.まとめ
電気工事士試験は決して難しくありません。多くの学習手段を活用して合格を目指しましょう。資格を取得すれば、就職・転職や起業の機会は多く得られ、安定かつ発展性のある仕事といえます。