専門家よもやま話
事故の怖さが安全への第一歩

  • LINEで送る

山形 浩史(やまがた ひろし)
長岡技術科学大学システム安全工学分野 教授

はじめまして。長岡技術科学大学で安全について教育と研究をしている山形といいます。先日、学部4年生を対象に電気安全の講義をしました。先ず電気安全をなぜ勉強するのかを分かってもらうために、感電事故の写真で怖さを知って欲しいのですが、感電火傷の写真を強制的に見せることはできません。写真をモニターに映し出す前に「これから感電火傷の写真を映します。見たくない、気分が悪くなると思う人は下を向いてください。終わったら知らせます。」と配慮をしなければなりません。いきなり火傷の写真を見せて、学生から「気分が悪くなった。夜中に思い出して寝られない、トラウマになった」などとクレームが来たら大学では大問題になります。

電気工事士の皆さんは、感電事故を起こさないように細心の注意をしていると思います。事故防止のために万全の注意を払っているのだから、事故は起きないと思ってはいけません。人間はミスをしますし、自分は注意していてももらい事故に合うこともあるでしょう。感電事故にあって大火傷を負っている同僚を助けなければならないかもしれません。そんなときに、大火傷を見て気分が悪くなっていたら同僚を助けられません。事故が起こったときに冷静に素早く的確に対処できるためには、大火傷を見慣れていることも必要です。新人にいきなり悲惨な感電事故の写真を見せると、大学生と同じような反応をするかもしれません。徐々に慣れてもらうには、感電事故のアニメからはじめて、軽傷の写真、重症の写真へと時間を置きながら進めていくしかないでしょうか。

どれだけ事故防止に注力しても、事故は起こります。事故が起こったときは、その被害をできるだけ抑えるための対処をしなければなりません。事故の怖さを知るとともに、事故対処が的確にできるように、事故の実態を適切に伝えておくことが必要です。

 

 

 

コラム一覧