全日電工連(全日本電気工事業工業組合連合会)
「電気工事技術者のための事故防止ハンドブック」より
目 次
1.データから見る事故の傾向
(3)大きな事故につながる「転倒・落下・衝突(人)」による事故
(5)「その他」の中で多い事故
1.データから見る事故の傾向
防ぐための取組みがなされながら、なかなか減らない事故。特に多い誤結線・誤接続に起因する事故によって、毎年多くの賠償金が支払われる結果となっています。ここでいう「事故」とは物損事故を指し、本コラムは全日電工連の損害賠償責任に関する調査を基に書かれた「電気工事技術者のための事故防止ハンドブック」より作成しています。感電死傷事故や高圧系統への波及事故は対象に含まれていませんが、調査内容はこれらの事故防止にも大いに参考になると考えます。そのような事故の影響について、実際のデータから見てみましょう
電気工事の事故でもなかなか減らない事故は、誤結線・誤接続による事故です。全日電工連の調査では、毎年の報告される事故の中で、誤接続に分類される事故は約23%の割合で発生しています(第1図)。誤結線・誤接続の具体的な内容の中には100V機器への200V印加が含まれており、現在でもなかなか減らない事故と言えます。
このような事故が年々起きているという事態は、安全・安心な社会インフラを維持する電気工事業として看過できないことです。また、ほかの事故は電気工事業以外の職種や業種でも発生するもので、共通の対策をとることが可能です。しかし、誤結線・誤接続による事故は、電気工事業特有のものであり、自社での対策を考える必要があります。
誤結線・誤接続による事故に次いで多いのが「転倒・落下・衝突(物)」による事故です。第1図で見るとおり、全体の22%を占めています。
高所作業をすることの多い、電気工事で発生しやすい事故と言えるでしょう。材料や機器、工具などを転倒・落下・衝突させて、お客様の財産や自身の持ち物を破損すること、あるいは人身に接触するという被害は多く発生しています。
【第1図 事故種類別発生の割合】
(2015年4月1日~2021年3月末までに発生した、全日電工連組合員の損害賠償に関する事故)
(3)大きな事故につながる「転倒・落下・衝突(人)」による事故
重篤な労働災害が起きやすいのは、作業者の転倒・落下・衝突による事故です。特に高所からの落下や転倒は、重症になる、障害を負う、最悪のケースでは死亡する場合もあります。
「堀削・穴あけ誤り」による事故も13%とかなりの割合を占めています。それらの事例を見ていくと、その多くが勘違い、確認を怠った、不注意によって掘削時や穴あけ時に他の設備を傷つけあるいは違った場所に穴をあけたというものです。
「その他」の中には、さまざまな事故が含まれていますが、特に目立って多いのは、防水の不備やエアコン工事でのドレインホースの扱いなどに起因する水漏れ事故です。
工事が終わった後や、かなり時間がたって発生するケースもあり、建物やお客様の貴重な財産への被害が発生しています。
件数は多くないですが、発生したときの被害金額が大きいのが自然災害です。大雨による法面崩壊、水没などによる被害、さらに強風による太陽光発電などの設備の破損、落雷による被害などの中には、一つの案件で数百万円から数千万円の被害金額が発生することもあります。